音量について (表現について)

恩師 森悠子先生や尊敬するヴァイオリニストの方々から学んだことを、僕なりに伝えてみたいと思います。

 

楽譜に表記されている音量表記(ダイナミクス)というものは、単純に音の大小を表すことはもちろんありますが、「その音楽に相応しい表現をする」ということです。

 

それは優しい音色でおおらかに広がるフォルテもあれば、強く硬いピアノもある、もちろん硬く鋭いフォルテも、薄く柔らかいピアノも多く存在しています。

 

どの表現においても言えることが1つ、「(筋肉の)力を入れて弾かないこと」です。

左右どちらの手も力任せに弾くという奏法は音がうるさく、なじまず、クオリティが低くなります。

駄目な例として右は人差し指に力を入れて弓を押し付けて弾いてしまう方が多いです。

左も必要以上に硬くした手で、弦を指板にめり込ませるつもりかというくらい抑え込むことはしません。

かと言って、フニャフニャな脱力のままで弾こうとか、スカスカのピアノで弾くということではありません。

 

左右どちらもしっかりと腕や手、弓の重みを音量に合わせて調節し、必要な分を使って演奏の幅を広げ、クオリティを上げて弾いているわけです。

基本どの音量や音形にもそれぞれの「発音」があります。

重みと毛の引っ掛かり弦を掴むことが大切です。

 

レッスンを何年も教えた生徒さんで、ようやく少しずつできるようになる人がいる程度なので、レッスンで手本もなく文字だけではどうしようもないかと思いますが、大雑把にfとpの2種類しかないとかではなく、fにもmfにもmpにもpにもそれぞれに10100種類(幅、形、色、濃度、太さ、重さ、鋭さ、質感、響き、速さ、距離感)をいろいろな要素を組み合わせて表現することが必要です。

 

これは途方もないことで、演奏が上手くなっても状況によって別の表現が沢山あります。

音符のリズムやテンポが変わればそれらも変わることはもちろん、情景(パストラーレ)なのか、心情(ロマンス)なのか、舞曲(ポルカ、メヌエット、フリアント)なのか、そして作曲者の生まれた国や作曲した場所、時代、演奏の会場が変われば、メンバーや人数が変われば、楽器編成が変われば、天気が変わればと何一つ同じ状況ではなく、やる度にまた新たな音楽が生まれます。

だから音楽は宇宙的で無限の表現があります。

 

まずは自身が思う表現を思った通りに弾けるように、様々なジャンルの曲や練習曲、音階練習で、表現する音クオリティ「音量、音形、音色など」を表現できるように(できるだけ近づけるように)なっておきましょう。

そのためには耳でしっかりと聞くこと、耳を良くすることが大切です。

 

 

例)

① 怒り狂った激しい f

② 透き通り軽く、濃厚な p

③ 硬く鋭く、太いクサビ型の mf

④ 重く暗く粘り気のある mp

⑤ 明るく輝かしい元気のある f

⑥ かっこよく堂々とした、うるさくない ff

⑦ 遠くで聞こえにくいけれど楽しそうでハッキリした p

⑧ しっとりとどこか物悲しさや憂いのある mp

⑨ すごく滑らか(レガートスラー)で流れがある mf

⑩ 純粋無垢でウキウキ飛び跳ねるような p

⑪ 愛おしくドキドキが止まらない、でも表に出さない pp

 

 

 

 

ということで

「fはうるさく雑音、pは聞こえずスカスカで音がない」の2種類しか持っていない演奏にならないように、考えて練習して行きましょう!

 

上記の例はどれも82UCP演奏会で演奏される曲の中で出てくる表現です。演奏される方も聞きに来られる方も、どこでどういった、いろいろな可能性がある表現がされるのか、考えてみてくださいね。