オーケストラの楽譜について②

2023.2.22更新


■書き込みについて

 

①書き込みは濃い鉛筆、太くて濃いシャーペンか専用の写譜ペンで

②できるだけシンプルに

③誰でも使える状態で

④できるだけキレイに

 

 簡単に書くと上記の状態の楽譜が理想的です。

 

 

 

 この画像は、適当に私が過去にやった楽譜にボールペンで書き込んでみたものです。(もう捨てます💦)

 

 とても汚くて見にくい楽譜になっていますね。

ざっとあげると

 

✕✕✕ボールペンでは書かない

✕✕余白がなく真っ黒な楽譜にしない

✕文字では書かない

✕指番号、弓順は必要最小限に

✕急な弓順変更も、本番までにキレイに書き直しましょう!

▲必要な注意は記号でシンプルに、誰が見てもわかりやすくキレイに書く!

◎できるだけ原譜から音程や音形、運指、奏法が想像できるように学んでいきましょう!

 

 楽譜とは、そこに書かれた情報をその都度読み取って再現するためのものです。したがって、演奏する瞬間に読み取れる情報量は多くありません。その1秒以下の時間で読み取るようなことがある場所に、学校で黒板を写すかのように言われたことをすべて楽譜に文字で記入されていても、演奏中に見ている余裕はありません。

 

 そのために、市販の楽譜には最小限必要な音楽記号と音楽用語が書かれています。

バロックのころにはかなり少なかったのですが、古典からロマン派へと進むうちに少しずつ増えていきました。

誰が弾いても同じ様に演奏できるようにするためには必要かもしれませんが、自由度や楽譜を読み解く力は減ってしまっているかもしれません。

 バロック、古典では当然やっていた表現、書いていなくても音の長さの変化や音量の微妙な変化はさせることが普通だったわけです。

 

 したがって、完全に理想を言えば、何も書き込まなくても読み取って演奏できることがベスト。

ですが、アンサンブルすること、オーケストラで演奏することは自分の思い通りの演奏だけでは成り立ちません。そのために必要最小限のことは記入していきます。

 

■書き込み方

 オーケストラの弦楽器においては、自分のやりたい弓順で演奏し続けることはできません。

 もちろん指揮者(クライバーなど)の指示でアウトとインがずっと逆に演奏されることがあったり、1stと2ndが逆になることや、チェロバスと逆になることもあります。また長い音をカンニングで返したり、長いスラーを切れ目がわからなくするためににランダムで場所を分けて返すなどすることもありますが、基本は揃っていないといけません。必要最小限の(ダウン)∨(アップ)は記入しておいてください。

 

 逆に、とにかくすべての返す音、すべての返すタイミングに弓順を記入することも邪魔になります。

 ∨と続く場合は最初の1つ書けば十分ですし、基本拍の頭がから始まる、スラーがついていない場合の8分音符4つの塊や16分音符の塊はから弓順で弾くことが普通です。

結果的に、基本の弓順や大事な音がになること、強拍をになることなど音楽のイメージができれば、弓順も頭でイメージできるようになるわけです。

 最終的に、トップが決めたボウイングが当然のように自分もそうイメージする弓順の場合は記入しなくても大丈夫ですが、本番用では隣の人がわからなくなるようなら、書いた(書いてあげた)方がいいこともあります。

 逆に邪魔なら消させてもらうことも相談してみましょう。


■弓順書き込みの例

 

原譜ではスラーがついている箇所を返す場合は書き込む。

 

弓順ではなく同じ方向が続く場合などは記入。

 

同じことの繰り返しは1回書くだけでも十分。

思わず⊓⊓⊓にしてしまいそうだったら記入。



 

■書かないで良くなって行ってほしい例

裏拍から始まり、次の小節の強拍を⊓で弾くことが標準なので、もしか書いても最初の∨1つだけにしていきましょう!


■弓順以外の書き込みについて

 弓順以外に必要なことに、表現や音量の変化などがあります。

 基本的に作曲者の必要とした情報は記入されていますが、抜けや表現の変化などから指揮者・音楽監督・トップなどから指示されることがありますので、その時は記入してください。

 例えばf(フォルテ)と書いてあるけれど、音量が足りないときはfの記号をなぞって太く強調するか、フォルテを○で囲んでアピールさせます。それでも足りない場合は指示者からffと書いておこうなど、別の表記を言われる場合もあります。

 ffまで言われていないときにもう一つバカデカくfを書き足したり、「フォルテ!」のように文字で記入することはやめましょう。

 すでにfのゾーンで弾いている際に、そのパートはもう少し弾いてほしい場合などは、「+」を丸で囲ったマークを書きます。前のfが前のページだったり、だいぶ前だった場合、忘れてしまう場合はフレーズのはじめなどだともう一度fを書き足したりします。

 徐々に大きくする場合はクレッシェンド記号小さくする場合ディミヌエンド記号を記入しましょう。

 逆にfだけれども控えめにという場合はfに()を付け(f)という感じにします。これで控えめにすることになります。

 pの場合はp記号を太くする、○で囲う場合はもっと小さく。(p)はあまり小さすぎないようにということになります。

 イタリア語表記で書かれる場合、増やす場合(太くや○)はmoltやpiu、逆はmenoと書かれます。

 できるだけ日本語表記を書き足すことはやめてみましょう。

 

 音の状態を記入する際に、音を保つ場合はテヌート記号、短くするときはスタッカート記号、強くアタックする場合はアクセント記号など、既存の記号を書き足すこともあります。

 他に弦楽器の場合は奏法によって表現を記入することもあります。

 弓を軽やかに離す(off)する場合には「 )」「」(コンマ)などのマークを小さく記入します。しかし、これは全部書いていくと多大な量になってしまうため、楽譜を読み取る力をつけ、スタッカートでベタベタ弾かないなどは基本として覚えていきましょう。もしか置いたままで少し体重を上げるだけでいいスタッカートの場合、私はそのゾーンのスタッカート最初に「on」と記入します。またその場合でも響かせない弾き方で腕の重みを変えずに十割のまま行って急ブレーキするような奏法は、特に古典、バロックでは使わないです。

 マルカートやマルテレ奏法が必要な場合でも弓の横の動きを止めるだけで、重みで弦に押さえつけて止める弾き方はしないでおきましょう。

 

 他に音の「切り」をスパッと離してほしい場合には「 / 」(斜線)を五線の上はみ出したところから(ソ以上)五線の下すぎる(レ以下)まで大きく記入します。

 長さを保つ場合は「 - 」(横棒)をここまでという意味で伸ばす位置まで引っ張って「|」(縦線)を書いて横向けの「T」のような記号を記入します。

 音符を優しく収める場合はディミヌエンドを書いてもいいのですが、「 )」(カッコ)を斜線同様五線の上から下までかけて大きく記入します。

 音楽上の「隙間・間」を取りたい場合は「 // 」(斜線2本)を記入します。これを書いた場所では次の音に飛び込まないようにブレスを取りましょう。

 替わりに「V」(ブレスマーク)をアップ記号と間違わないように、これも五線の上から下まで長細く書いても大丈夫です。もちろん、息をあわせないといけない場所にもブレスマークは(イメージがなく忘れてしまう箇所や、絶対にブレスを大きく取る必要がある箇所には)記入しても構いません。

 レッスン時にはフレーズの切れ目が読み取れるようになるまで、小さいブレスマークを書いたりしますが、徐々にそれは書かなくてもいいように、楽譜読み取ってフレーズの切れ目が読み取れるようになっていきましょう。


■書き込み(例2

 

マークや具体的な書き込み例は過去に書いたページも参照してみてください。

レッスンやオーケストラで使う記号・言い方②


■最後に

 日本の教育や古い教育では楽譜を真っ黒にするほど、書き込むという教育もあったかと思いますが、結局頭で想像できなければ意味がありません。できるだけ書かずに読み解く力をつけていきましょう!

 書き方にも少し性格が現れるかもしれませんが、記入するときは他人が見てもわかりやすく、きれいに整っているように記入することを心がけましょう。

 緊急で黒塗りや斜線で消して上に別の弓順を書いた場合、時間のあるときにきちんと消しゴムで消して書き直しましょう。